2008年10月31日金曜日

にわとりササミ天丼

今日のお昼は学食で食べてきました。
「鶏ササミ天丼」というメニューがあったのですが、私の次の人はそれを「にわとりささみてんどん」と言い、私は違和感を感じました。

その理由を言語学的に説明してみたいと思います。



ものごとを分類して名付けたものをタクソノミーと呼びますが、その縦軸上で特別な地位を占めるカテゴリーのことを「基本レベルカテゴリー」と呼びます。(同一カテゴリー、つまり横軸上で特別な地位を占めるものは「プロトタイプ」と呼ばれます。)
たとえば、動物のカテゴリーの一部をごく簡単に示すと、次のようになります。
動物
-豚
-牛
-鳥
--鶏
--鴨
--ダチョウ
--・・・
-魚
-馬
-・・・
基本レベルカテゴリーは、詳細さ(下向きの方向)と一般性(上向きの方向)が適度に折り合う点であり、ある事物を初めて話題に出す際に、特に理由がなければこの基本レベルカテゴリーを指す語を用いることが知られています。
で、ここでさきほどの「にわとりささみてんどん」です。
にわとりの肉のことは、鴨肉ではなく、というようなことを強調したいのでない限り、普通は「とりにく」と呼びます。
一方、コケコッコーと鳴く生きたにわとりは、普通「にわとり」と呼びます。「とり」というと、カラスやスズメも含むより上位のカテゴリーを指します。
「にわとりの唐揚げ」なんて言うと、丸々揚げたかのような感じがして、あまり食べたくない感じがします。
つまり、同じ鶏(といっても生きているか食肉であるかは違いますが)を指しているのですが、食べ物について言う場合には「とり」が基本レベルで、動物の個体について言う場合には「にわとり」が基本レベルになっているという違いがあり、「にわとりささみてんどん」はそれに反した言い方であったため、奇妙に感じたのではないでしょうか。
別の「とりにく」メニューを食べながらそんなことを考えた昼休みでした。
(なお、基本レベルは地域や文化によって異なります。上記の感じ方はあくまで私個人の感じ方です。)

2 件のコメント:

  1. では、魚の場合と肴の場合はどうなるでしょうか?ご教授ください

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  2. おぼろげな記憶ですが、もとは酒のつまみ全般を肴(さかな)と呼んでいたのですが、後にそのうちの一部である魚(うお)を特に「さかな」と呼ぶようになった、というようなことは聞いたことがある気がします。
    現在ではその特定的な魚の意味が一般的となり、つまみの意味は「酒の肴」など使用に制限があります。
    「ごはん」が炊いた米だけでなく、食事一般を指すようになった(おそらくこの順番だと思うのですが未確認です)のと逆の関係にあたる、意味の特定化でしょうか。

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